動画もあります。
大事な文章なので一読をおすすめします。
私は、去る9月30日の県知事選挙において、県民の皆さまの御支持をいただき当選いたしました。145万県民の知事として改めてその責任の重さを痛感するとともに、身の引き締まる思いであります。
今日までの沖縄県政の歴史を顧みますと、歴代の県知事が、複雑で困難な課題の中にあっても、県勢の発展に力を尽くされたことに対し、心から敬意を表します。
特に、8月8日に御逝去された故翁長雄志前知事におかれては、「県民が心を一つにすること」を深く望み、県民が持つ「力」を誰よりも信じ、揺らぐことのない自らの決意がいつも県民と共にあることを命を懸けて私たちに伝え続けられてきました。
私は、この思いをしっかりと受け継ぎ、全力で県政運営に取り組んでまいります。
沖縄は、3年半後に復帰50年という大きな節目を迎えます。この間、これまでの沖縄振興の取り組みにより、社会資本の整備は着実に進展し、観光リゾート産業や情報通信関連産業等が大きく成長するなど、自立型経済の構築のためのさまざまな成果がでてきております。
平成29年度の入域観光客数は約958万人となり、5年連続で過去最高を更新しました。また、年度平均の完全失業率は平成29年度が3・6%、同年度の有効求人倍率は年度平均で1・13倍となり、いずれも改善し、雇用情勢が好転するなど、県経済は好調に推移しております。
しかしながら、1人当たりの県民所得、子どもの貧困率、求人と求職のミスマッチ、若年者の高い離職率、人手不足などの課題もあります。
こうした課題に対応した施策を力強く推進していくとともに、好調な経済を更なる発展につなげるべく、沖縄21世紀ビジョン基本計画に基づき各種施策を展開してまいります。また、沖縄らしい優しい社会を構築するため、アジアのダイナミズムを取り込むことなどにより、経済全体を活性化させ、持続的に発展する好循環を創りあげてまいります。
このような考えの下、私は、島々の鼓動、人々の輝き、限りない沖縄の可能性を存分に引き出し、「誇りある豊かさ」の実現に向けて、3つの視点から諸施策に取り組んでまいります。
一つ目は、「新時代沖縄の到来」の視点です。
私は、復帰50年を迎える「新時代沖縄」を日本経済の再生に貢献し得る方向に導いてまいります。
国際物流拠点として開かれる空港と港湾、どこにいてもアクセス可能な通信環境、鉄軌道を含む新たな公共交通システムの導入、世界中から寄港するクルーズ船、MICEで呼び込まれる東海岸一帯への投資、発信される情報とビジネスの創造、新時代に対応する産業とITの融合、世界最先端の健康·医療産業、再生可能エネルギーの展開、高付加価値県産ブランドの海外展開、海洋資源の開発など、アジアのダイナミズムに乗って、沖縄の可能性を高く引き出し、更にその先を目指してまいります。
沖縄の地理的優位性を生かし、アジアの活力を取り込み、スケール感とスピード感をもってさまざまな施策を推進し、「新時代沖縄」の次なる振興計画を策定してまいります。
二つ目は、「誇りある豊かさ」の視点です。
互いの政治的立場の違いを超えて、歩み寄ることのできるウチナーンチュの包容力は、対立や分断を乗り越える賢さであり、私たちが持てる最大の力です。
県民同士で負担を付け替え、新たな犠牲を強いることは、私たちが望む解決の道ではありません。私たちは、このことを先人たちの労苦と智恵から学び歩んできました。
私は、建白書の精神に基づき、辺野古の新基地建設に反対し、普天間飛行場の1日も早い閉鎖·返還を政府に強く求めてまいります。
また、過重な基地負担の軽減を図るため、基地の整理縮小をはじめ、日米地位協定の抜本的な見直し、米軍人軍属による事件·事故など基地から派生する諸問題の解決に全力で取り組んでまいります。
三つ目は、「沖縄らしい優しい社会の構築」の視点です。
私は誰一人取り残すことなく、全ての人の尊厳を守り、多様性や寛容性を大切にした共生の社会づくりを目指します。
また、子どもの貧困対策を最重要政策に掲げて取り組みます。
先祖(ウヤファーフジ)への敬い、自然への畏敬の念、他者の痛みに寄り添うチムグクルは沖縄文化の根底をなすものです。
人々を魅了する沖縄の文化を存分に生かし、沖縄21世紀ビジョン基本計画に基づき、自然環境の保全や教育、福祉、医療等の各分野の施策展開を通して、「沖縄らしい優しい社会」を実現してまいります。
以上の三つの視点を踏まえ、15の実施政策に基づき諸施策を展開してまいります。
産学官による万国津梁会議(仮称)を新設し、世界各国との経済、文化、教育、人材などの交流を促進して、経済発展資源の創出に取り組みます。
国際機関と連携する人道的支援活動の拠点を整備し、水道技術や医療の提供など、開発途上国や大規模災害時の支援活動で、国内外に貢献する沖縄を目指します。
アジア諸国との経済交流に向けたトップセールスやプロモーションを積極的に展開し、沖縄経済の成長および発展を推進してまいります。
また、畜産品、水産品等の県産ブランドの海外輸出体制を強化するため、輸出相手国の衛生基準に対応できる高度衛生加工処理施設の整備等を促進します。
入域観光客1千万人時代を迎え、今後も観光客の増加が見込まれています。自然環境の保全、観光施設の整備など観光基盤の拡充·強化を図り、持続可能な世界水準の観光都市沖縄を目指し、「観光·環境協力税」(仮称)の導入に向け取り組みます。
「琉球歴史文化の日」(仮称)の制定を通じ、沖縄の先人たちの歩んだ歴史や知恵を知り、伝統文化の理解を深め、継承と発展に取り組みます。
日米地位協定を抜本的に見直し、航空や環境に関する国内法令の適用や事件·事故時における自治体職員の迅速な立ち入りの保障を求めます。
また、米軍基地の整理縮小、基地従業員の雇用保障、駐留軍用地跡地の円滑な利用と環境浄化対策など、国の責務としての取り組みを求めます。
跡地利用に際しては、沖縄発展のための貴重な空間として、県土構造の再編を視野に入れた総合的かつ効率的な利用を推進し、大規模返還に備え、体制を強化します。
離島の移動コストや割高となる生活コストの低減化を図るため、引き続き支援を実施するとともに、小規模離島の水道料金の低減化や、水質の安定確保のための技術支援など、離島振興に向けた取り組みを推進·強化します。
いのちの水、やんばるの森と海を守り、未来につなぐために、自然保護への啓発や、県民運動を通じた「やんばるの森·いのちの水基金」(仮称)の創設に取り組むほか、世界自然遺産の登録を目指し、地域の協力と広く県民の意識を高めるための活動を支援します。
また、北部地域の医療体制を安定的に確保するため、北部基幹病院構想の早期実現を図ります。
家庭の経済環境に関わらず、子どもたちが安心して学業に励むための支援が早急に必要なことから、中学生、高校生のバス通学の無料化に取り組みます。
待機児童の解消に取り組むとともに、子どもたちが健やかな環境で安心して放課後を過ごせるよう、市町村や学校と連携して公的施設への放課後児童クラブの設置を促進し、利用料の低減を図ります。
地域の明日を担う人材育成の強化の一つとして、北部地域への中高一貫教育校の設置を推進します。
母子保健と子育て支援が一体となった機能を有する子育て世代包括支援センタ
ーを全市町村に設置し、母子手帳の交付から、妊娠、出産、修学前の子育てを切れ目なく支援します。
また、10代の妊娠への支援、ネグレクト・虐待などの未然防止に努め、母子を孤立させず、健やかな育ちを支援します。
全ての県民の尊厳を等しく守ります。個々の違いを認め合い、互いに尊重し合える共生の社会づくりを推進します。
犬猫の殺処分は、「ゼロ」から「廃止」を目指し、命が尊重される動物愛護の政策に取り組みます。
そのほか、人手不足が深刻化する産業分野において、必要な人材の育成や雇用のミスマッチ解消等の人材確保、外国人材の活用に向けた取り組みを推進してまいります。
また、沖縄の成長の可能性を引き出す大型MICE施設の整備を積極的に推進します。
さらに、鉄軌道については、県土の均衡ある発展、県民および観光客の移動利便性の向上、交通渋滞の解消による経済の活性化、基地返還跡地のまちづくりの推進などに資する重要な社会基盤であることから、導入に向けて取り組んでまいります。
私は、県政運営に当たって、以上のような公約を着実に推進してまいります。
かつて、沖縄戦、米軍占領下を生きたウチナーンチュが、涙とともに失ったもの、汗とともに得たものは、社会を支え、希望の世紀を開くたくましい営みにつながっています。
また「県民の生活が第一」、「イデオロギーよりアイデンティティー」、「肝心こそ大切~チムグクルドゥテーシチ」、このような言葉の持つ意義・意味を尊重し、全ての県民の皆さまが、笑顔と喜びを広げ、夢や希望が持てるよう、かけがえのない沖縄の未来を創りあげてまいります。
子どもたちや明日を担う若者たちに、平和で真に豊かな沖縄、誇りある沖縄、「新時代沖縄」を託せるよう、公約に掲げた諸施策を着実に推進し、職員一丸となって全力で県政運営に当たる決意であります。
以上申し述べましたことに対し、議員各位および県民の皆さまには、ご理解とご協力を賜りますよう、重ねてお願い申し上げ、あいさつといたします。
イッペーニフェーデービル
平成30年10月16日
沖縄県知事 玉城デニー